「自分から辞めたんだから、自己都合でしょう」
私も、まったく同じことを思っていました。
前に勤めていた会社を辞めたとき、私は自分で退職を切り出しました。だから離職票に「自己都合」と書かれていても、当たり前だと思って、何も確認せずに手続きを終えました。
でも、この記事を書くために調べていて、当時の自分に教えてあげたくなることをいくつも見つけてしまったんです。
働きすぎが理由で辞めた場合、自分から辞めていても「会社都合」と同じ扱いになることがある——制度上、そういう仕組みがあるということを、私はまったく知りませんでした。
この記事では、その仕組みと、確認するための具体的な手順をまとめます。「もう手続きしちゃったな」という方も、まだ間に合うケースがあるので、よかったら最後まで読んでみてください。
この記事でわかること
- 離職票の「自己都合」は、実は最終決定ではないということ
- 働きすぎで辞めた場合の、具体的な判断の目安
- 2025年4月に変わった、失業保険の新しい前提
- ハローワークで確認するときの進め方と、必要なもの
「自分から辞めた」=自己都合で確定、ではありません
まず、いちばん大事なところからお話しします。
離職票に書かれている退職理由は、会社がハローワークに提出した「申告」です。会社がそう考えている、という記録なんですね。
そして、失業保険をどの区分で支給するかを最終的に決めるのは、会社ではなくハローワークです。
厚生労働省の資料でも、離職票を発行する時点での判断はあくまで事業主が提出した書類にもとづくもので、最終的な離職理由の判定は、受給資格を決めるときに本人への確認と調査を経て行う、という趣旨のことが示されています。
ここがポイント
離職票の「自己都合」を見た時点で、多くの人は「あ、やっぱりそうか」と思って手続きを進めてしまいます。でも本当は、そこから自分の口で事情を伝える機会があるということです。
私も含めて、ここを知らずに終えてしまう人はかなり多いんじゃないかと思います。
どんな辞め方だと「会社都合」の基準に当てはまる?
会社都合にあたる区分を、制度の言葉では「特定受給資格者」と呼びます。倒産や解雇のように、再就職の準備をする余裕もなく辞めることになった人を、手厚く保護するための仕組みです。
この範囲は厚生労働省が「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」として細かく定めていて、そこには倒産・解雇以外のケースもいくつも書かれています。
① 働きすぎ(残業時間の基準)
意外と知られていないのが、これです。長時間の残業を理由に辞めた場合も、基準に含まれています。
目安として示されているのは、離職の直前6か月のうち、次のいずれかに当てはまる場合です。
- 連続する3か月以上、月45時間を超える時間外労働があった
- いずれか1か月で、時間外労働が100時間を超えた
- 連続する2か月以上の期間で、時間外労働の平均が月80時間を超えた
「月45時間超が3か月」は、週休2日で月21日出勤するとして、毎日2時間ちょっと残業していれば届いてしまう水準です。決して珍しい話ではないと思います。
ここで大事なのは、残業代がきちんと払われていたかどうかは関係ないということ。あくまで「働いた時間の長さ」で見る基準です。
② 上司や同僚からの著しい嫌がらせ、冷遇
もうひとつ、パワハラに関わる項目もあります。事業主や上司、同僚などから故意の排斥、著しい冷遇や嫌がらせを受けたことによって辞めた場合が、対象として挙げられています。
ただし、この項目は「自分がつらかったかどうか」ではなく、客観的な事実として示せるかが問われる部分です。記録が残っていないケースも多く、①の残業時間のほうが数字で示しやすい、という現実はあります。
③ そのほかにも、いろいろあります
- 賃金が支払われなかった、または大幅に下げられた
- 採用時に示された労働条件と、実際が著しく違っていた
- 退職を勧奨された
- 事業所が移転して、通勤が困難になった
「自分から辞めた」つもりでも、背景にこうした事情があった方は少なくないはずです。
ただし、基準に当てはまる=自動的に認定、ではありません
ここは正直にお伝えしておきます。
基準の数字を満たしていても、それだけで会社都合になるわけではありません。判断には、①その事実があったことと、②それが理由で辞めたことの両方が必要で、さらに事実を示せる資料が求められます。
そして最終的に判断するのは、あくまでハローワークです。この記事を読んで「自分は会社都合だ」と決めてしまわず、確認する材料として使っていただけたらと思います。
2025年4月から、失業保険の前提が変わりました
ここで、制度そのものの話をひとつ。ネット上にはまだ古い前提のままの情報も残っているので、確認しておきますね。
自己都合でも、給付制限は原則1か月に短縮されました
以前は、自己都合で退職すると7日間の待期期間に加えて2か月の給付制限があり、実際にお金が振り込まれるまでかなり待つ必要がありました。
これが、2025年4月1日以降に離職した場合、原則1か月に短縮されています。
ただし、過去5年間に2回以上自己都合で退職している場合(今回で3回目以上)は3か月になるとされているので、そこは注意が必要です。
「じゃあ会社都合を確認する意味はもうない?」…あります
給付制限の差が縮まったので、そう思われるかもしれません。でも、会社都合かどうかで変わるのは、待つ期間だけではないんです。
理由1|給付制限そのものがなくなる
特定受給資格者と認められると、給付制限は付きません。7日間の待期期間のあとから支給の対象になります。
理由2|もらえる日数が大きく変わる
ここが、いちばん金額に効いてくる部分です。
| 被保険者だった期間 | 自己都合(一般) | 会社都合(35〜44歳の例) |
|---|---|---|
| 1年以上5年未満 | 90日 | 150日 |
| 5年以上10年未満 | 90日 | 180日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 | 240日 |
※年齢と加入期間の組み合わせで変わります。最新の日数は必ずハローワーク公式でご確認ください。
日数が倍近く違うケースもあります。1日あたりの金額が同じでも、期間が2倍なら受け取る総額も大きく変わりますよね。
理由3|国民健康保険料が軽くなる場合がある
これも見落とされがちなポイントです。特定受給資格者などに該当すると、国民健康保険料の計算で前年の給与所得を30/100とみなして算定する軽減制度があります。全国どこでも使える制度で、対象は離職日の時点で65歳未満の方です。
対象になる期間は、離職日の翌日がある月から、翌年度の末までです。退職後は国保の保険料が想像以上に重くのしかかってくるので、これは相当大きいと思います。
ただし、手続きは自分で市区町村の窓口に届け出る必要があるものです。黙っていて自動で安くなる、というものではありません。
確認するために、手元にあると強いもの
ハローワークで事情を伝えるとき、口頭だけよりも、記録があるほうが話が早く進みます。
- タイムカード、勤怠システムの記録(出退勤時刻がわかるもの)
- 給与明細(残業時間や残業代の記載)
- PCのログイン・ログオフ履歴
- 業務メールの送信時刻
- シフト表、勤務表
まだ在職中の方へ
上に挙げたものの多くは、辞めたあとでは手に入りにくくなります。給与明細を保管しておく、勤怠記録を控えておくなど、今のうちにできることがあります。
もちろん、持ち出しが問題になるものもあるので、自分の労働時間がわかる範囲の記録にとどめておくのが安心です。
ハローワークでの進め方
難しい手続きではありません。流れはこんな感じです。
- 離職票が届いたら、退職理由の欄を確認する
会社がどう書いているかを見ます。ここに、本人が異議のあるなしを記入する欄も用意されています。 - ハローワークで求職の申し込みをする
このとき、離職票を提出します。 - 受給資格を決めるときに、事情を伝える
「残業が続いていたことが辞めた理由です」と、自分の言葉で伝えます。ここが本番です。 - 資料の提出を求められたら出す
その後、ハローワークが会社にも確認を取ったうえで判断します。
会社に知られてしまう?
これは気になるところだと思います。ハローワークが判断のために会社へ確認を取ることはあるので、まったく知られずに進む、とは言えません。
ただ、これはあくまで制度に定められた確認の手続きです。すでに辞めた会社との関係で不安が大きい場合は、その不安も含めてハローワークの窓口で相談してみるのがいいと思います。
私の場合は、こうでした
最後に、私自身の話を少しだけ。
私が前の会社を辞めた理由は、ひとことで言えば「この先も仕事量が減る見込みがなかったから」でした。
人が入ってきても、短い期間で辞めていく。だから残った人の負担はいつまでも減らない。新しい人が入るたびに「今度こそ」と思って、また同じことが繰り返される。その構造が変わらないと分かったとき、私は辞める決断をしました。
正直に書くと、閉じた場所で強い言葉を浴びせられて、しんどい思いをしたこともありました。ただ、それが直接の理由かというと、自分でもはっきりとは言い切れません。積み重なったものの、ひとつだったという感覚です。
そして私は、自分から退職を切り出しました。だから離職票が自己都合になっていても、当然だと思っていました。疑ってすらいなかったです。
残業時間の長さが、退職理由の判断に関わってくる。
そんな仕組みがあるなんて、当時はまったく想像していませんでした。今回この記事を書くために調べて、初めて知ったくらいです。
私の場合はもう時間が経ちすぎているので、今から何かできるわけではありません。だからこそ、同じ状況にいる方には知っておいてほしいと思って、この記事を書きました。
確認するだけなら、お金はかかりません。
ひとりで抱え込まないでください
お金の手続きの話をしてきましたが、それ以前に、心や体がしんどい状態にある方もいるかもしれません。
そういうときは、まず相談できる場所を頼ってください。どれも無料で使えます。
- ハローワーク|失業保険の手続き、退職理由の相談
- 総合労働相談コーナー|各都道府県の労働局に設置。残業・ハラスメントなど労働問題全般の相談窓口です
- こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)|気持ちがつらいときに
- お住まいの市区町村の国保窓口|保険料の軽減について
落ち着いてきたら、次のことを考えても大丈夫です
手続きが一段落して、少し気持ちに余裕が出てきたら。そのときに、次の働き方を考えてみるのもいいと思います。
私が辞めたときにいちばん怖かったのは、「また同じような職場だったらどうしよう」ということでした。求人票だけでは、実際の残業時間や職場の雰囲気までは分からないんですよね。
そういう部分を事前に聞ける相手がいると、少し気持ちが楽になります。すぐに転職しなくても、どんな求人があるのかを眺めてみるだけでも、選択肢の感覚がつかめると思います。
よくある質問
Q. 自分から退職届を出しました。それでも確認していいんですか?
A. はい。退職を切り出したのが自分でも、その背景にある事情は判断の対象になります。むしろ、自分から辞めた方こそ確認していないケースが多いと思います。
Q. 証拠が何も残っていません。
A. まず一度、ハローワークの窓口で相談してみてください。給与明細が残っていれば、そこから読み取れることもあります。会社側にも記録が残っている場合があります。
Q. 残業代はきちんと払われていました。それでも対象になりますか?
A. 基準として見られているのは働いた時間の長さで、残業代の支払いの有無とは別の話とされています。
Q. もう失業保険をもらい終わりました。今から変更できますか?
A. 失業保険を受け取れる期間は、原則として離職日の翌日から1年間です。すでに期間が過ぎている場合、あとから変更するのは現実的には難しいと思います。気になる場合は、ハローワークで確認してみてください。
Q. 会社と揉めたくありません。
A. 自分から会社に何かを言いに行く必要はありません。ただ、ハローワークから会社へ確認が入ることはあります。不安な点は窓口で相談しながら進められます。
関連記事
辞める前後にやっておきたいことは、こちらでもまとめています。



まとめ
長くなったので、最後に整理します。
- 離職票の退職理由は会社の申告であり、最終判断はハローワークが行います
- 働きすぎ(月45時間超が3か月連続など)は、会社都合の基準に含まれています
- 2025年4月から、自己都合の給付制限は原則1か月に短縮されました
- それでも、給付日数と国保料の軽減という大きな差が残ります
- 勤怠記録や給与明細は、在職中のうちに手元に残しておくと安心です
- 基準に当てはまる=自動的に認定、ではありません。まずは相談を
自分から辞めた人ほど、疑いもせずに手続きを終えてしまいます。私がそうでした。
この記事が、確認するきっかけになればうれしいです。
出典・参考
-
- ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」
ハローワークインターネットサービス - 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要 - ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」
ハローワークインターネットサービス - 基本手当の所定給付日数 - 厚生労働省「『給付制限期間』が1か月に短縮されます」
- ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」
- 国民健康保険料の軽減については、お住まいの市区町村の公式サイトをご確認ください
本記事は2026年10月時点の情報をもとに作成しています。制度は改正されることがあるため、実際の手続きの際は必ず公式の最新情報をご確認ください。また、個別のケースの判断についてはハローワークの窓口にご相談ください。

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